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【宋 文洲 メルマガ より】どん底の効用

高速道路をずっと走ると眠くなるように、人間は良い調子が続くと必ず惚けて
きます。当然、人間の塊である組織も同じです。

人間の本当の力が試されるのはうまく行っている時ではなく、どん底に陥った
時です。どん底で喘いでいる間に智慧と闘志が磨かれる人もいれば、自暴自棄
になる人もいて、消え去る人もいるのです。

好きでも嫌いでもどん底が訪ねてくるものです。どん底の深さは人によって異
なりますし、その人自身の深さによってどん底の深さの感じ方も違うのでしょう。

しかし、中途半端などん底はよくありません。どうせなら自己否定と自己険悪
に繋がるほどのどん底がいいと思います。所詮、人間の本当の反省はどん底に
落ちないとできないからです。

「反省だけなら猿でもできる」といいますが、それは人様に見せるための偽反
省だからです。いわゆる他人のための反省であり、これ以上の非難を避けるた
めの手段に過ぎないのです。

部下のミスや過ちをみて「反省しろ」と上司がいうと、「はい。反省します」
と部下が言います。はっきり言ってこれはただの茶番です。人様に言われて反
省する人などは居ません。部下は本当に反省する時は痛みを感じてこれ以上逃
げ道がなくなり、しかもだいぶ時間をかけてその痛みを噛み締めた時でしょう。

数千年前の記録を読んで「人間は進歩していない」と考えることは誰にでもあ
るかと思います。傲慢が怠慢を呼び、怠慢がどん底を招きます。どん底が反省
を引き起こし、反省が成長をもたらします。成長が頂点を向かえると傲慢が静
かに生まれます。

進歩しないように見えますが、それは人生が短いからです。親の反省は子の反
省に繋がらないからです。反省はあくまでも自らのどん底によるものですが、
傲慢は簡単に先人の業績から「継承」してしまいます。

自分が大した苦労もしていないのに先祖の偉業を誇りに生きる人間はその典型
です。自分がどん底から這い上がる経験に裏付けられていない誇りは誇りでは
なく虚構と傲慢そのものです。世襲はなぜ人を弱くするかはここに原因があり
ます。世襲リーダーはなぜプライドが高く逆境に弱いかもここに理由があります。

どん底はつらいのですが、過剰に心配することがありません。それは自分達が
できない真の反省を神様が促してくる過程と思えばいいのです。いつでも「反
省しない奴」を嫌うこともありません。本当にそんな人間であれば、いずれど
ん底に陥って反省をせざるをえなくなるでしょう。

人間、組織、そして国家の本当の強みはどれほどの栄光を経験したことではな
く、どれほどのどん底を経験し乗り切ったかということでしょう。成長とは頂
点から始まるものではなくどん底から始まるものです。
by makoto_nakamu | 2009-07-10 13:27 | 言葉 | Trackback | Comments(0)